高次脳機能障害とは
病気や交通事故など様々な原因で、脳が部分的に損傷を受けたために生じる、言語や記憶などの知的な機能の障害をさします。
他の障害と比べると、外見上は障害が目立たないことや、本人も自分の障害を十分に認識できていない場合があります。
高次脳機能障害の症状
注意障害
集中することが難しくなったり、行動の切り替えが難しくなったりする障害。
症状の例
- 周囲のことに気が散ってしまい、作業に集中できない
- 同時に2つのことができない(料理の間に洗濯をする、など)
対応の例
- 落ち着いた静かな環境で作業を行う
- 同時に2つのことはせず、ひとつずつ行う
記憶障害
新しいことを覚えたり、発症前後の記憶を思い出したりすることが難しくなる障害。
症状の例
- 少し前の出来事や予定を忘れてしまう
- 何度も同じことを繰り返して話してしまう
- 自分が忘れたということに気がつかない
対応の例
- スケジュール帳、日記、メモなどに覚えておかなければいけないことを書き、それらを肌身離さず持ち、いつでも確認できるようにしておく。
- 目覚まし時計や携帯電話などのタイマー機能を利用し、予定の時間を忘れないようにする
- よく使う物は同じ場所に置く
遂行記憶障害
物事や行動を計画し、順序立てて行うことができにくくなる障害。
症状の例
- 物事を順序立てて行うことができにくくなる
- 状況に応じた優先順位がつけられない
- とっさの出来事に臨機応変に行動を変更することができない
対応の例
- 事前に物事の手順を紙に書き出すことで行動を見える化し、それを見ながらひとつずつ順を追って行う
- 混乱した時には、周囲の人がひとつずつわかりやすく説明し、一緒に考えながら行う
失語症
「話す」「聞いて理解する」「読む」「書く」ができにくくなる障害
症状の例
- 話の内容が理解しにくい
- スラスラと言葉が出ない、違う言葉が出てしまう
対応の例
- ゆっくりはっきり話す、繰り返す
- 複雑な表現(長文や二重否定など)を避け、短く簡潔な表現を使う
- 「はい」「いいえ」で答えられる形で質問する
- 選択肢を提示して選んでもらう
- 身ぶり、手ぶりや文字・写真・絵・記号を併用する
- 重要なことは理解できたかどうか確認する、メモを渡す(仮名よりも漢字がわかりやすい)
失行症
簡単な動作やマネ、使い慣れた道具がうまく使えなくなる障害。
症状の例
- よく使う道具(歯ブラシ、はさみ、スプーンなど)がうまく使えない、使い方がわからない
- サヨナラと手を振るなど、簡単な身ぶりができない
対応の例
- 道具の使い方、手順の絵を描いたメモを使う
- できないところは手伝い、できるように繰り返し練習する
失認症
見ているもの、聞いているもの、触っているものが何かわからなくなる障害。
症状の例
- 目の前に見えているものが何かわからない
- 聞こえた音が何の音かわからない
- よく知っている人の顔を見ても誰かわからない
対応の例
- 障害されていない他の感覚を使う(見たものがわからない場合は、手で触ったり耳で聞いたりする)
- 人の顔がわからない時は、声をかけ、名前を伝える
半側空間無視
視力に問題はないのに、目にしている空間の半分に気が付きにくくなる障害。
症状の例左半側空間無視の場合
- 食事の左半分を食べ残してしまう
- 歩行中、左側の物に気が付かずにぶつかってしまう
- 車椅子の左側のブレーキをかけ忘れてしまう
対応の例左半側空間無視の場合
- 食事を気が付きやすい体の右側に置く
- 無視のない右側から声をかける
- 左側に目印をつけて注意を促す
- 左側への注意を一緒にいる人が気にかけ声をかける
半側身体失認
身体の片側(麻痺側)が気が付きにくくなる障害。
症状の例
- 麻痺している手足を無視してしまう
- 麻痺している手足が、自分の体だということがわからない
- 手足の麻痺は少ないのに使わない
対応の例
- 麻痺している手足を意識できるように見たり触ったりする習慣をつける
- 気が付かない場合は周囲の人が手足のことに気をかけ、踏んだりしないように気を付ける
行動と感情の障害
感情や意欲・行動をコントロールすることができなくなる障害。
症状の例
<欲求や感情が抑えられない場合>
- 突然怒る、笑う、泣くことがある
- したいことがあると我慢できない
- 新しいことや環境の変化によって、不安になり、落ち着かなくなる
<意欲がわかない場合>
- 自分から行動を起こそうとしない
- ボーッとしてしまう
対応の例
<欲求や感情が抑えられない場合>
- 興奮した時は、話題や場所を変え、本人が落ち着くのを待つ
<意欲がわかない場合>
- 本人が興味を持ちそうなことから始める
- 今できること、今楽しんでいることをじっくり取り組んでもらう
地誌的障害
場所がわからなくなる障害。
症状の例
- よく知っている場所や道で迷子になってしまう
対応の例
- 本人が行動できる範囲を家族や周囲の人が知っておく
- 名前、住所、連絡先を書いたカードや携帯電話(GPS付き)を身につける
- 家の中で迷子になってしまう場合は、目印(案内など)を本人の目線の高さにつけておく
高次脳機能障害はこれらの一つが症状として出る場合もありますし、重複している場合もあります。
これらの症状や対応はあくまでも一例で、その方によって症状や対応は様々です。
また一見すると判断しにくいこともありますので、病前・受傷前とその後の性格や行動の違いをよく見ることが大切になります。
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